「それで……瑞樹君はどうなんだい?」
「とりあえず今日一緒に登校してみたんですが、駄目です。取り付くしまもなかったです。も
う少し時間が必要かもしれません」
俺はカーテンを閉め切り、入り口のドアには『会議中につき関係者以外立ち入り禁止』とい
う張り紙をした生徒会室で『第一回青春会議』に参加していた。
「ふーむやはり一筋縄ではいかないか……防衛委員長、妨害等の有無はどうだ?」
『はっ』と防衛委員長と呼ばれた男が立ち上がり返事をして答える。
「こちらでは妨害者による情報工作、脅迫、また候補者への直接妨害も確認しておりません」
「諜報委員は?」
「はっ!工作員からは何も情報は入っておりません。沈黙を保っているようです」
「うーむ…敵側の工作があったというわけではないようだな」
「あの~、一体なんなんですか?防衛委員とか諜報委員って」
「いや~、最初は同盟を作り上げたときに色々情報を集めたりとか瑞樹君自身を守るために候
補者を集めて作り出したんだけど、今は敵組織からの防衛と諜報活動が主な任務だよ」
「よくわからないんですけど……つまり剥離先輩達からの攻撃を防衛するためと情報を集める
ための委員ってことですか?」
「その通り!格好いいだろう?こういうのも青春っぽくていいよね!」
「……なんか青春関係無くなっているような気がするんですけど……」
「そんなことよりしばらくは小林君と共同して瑞樹君へのサポートを頼むよ。それから防衛委
員は小林君の身辺警護を、諜報委員は敵組織の動向を逐一報告してくれ……このまま剥離がお
となしくしているとは思えないからね」
テキパキとみんなに指示をだす姿はさすが副生徒会長らしく思えたが、指示している内容が
内容なので苦笑いが出てしまう。
会議を終えて、自分の教室に戻る途中で瑞樹と出くわした。
手には四角い包みを持っている。 すると瑞樹は俯きながら、俺を廊下の隅に引っ張ってい
き、
「ちょうど良かったわ……はい!」
といって俺に四角い包みを俺に渡してきた。
「なんだこれ?」
「あんたのお母さんが昨日電話で明日は忙しいから弁当作れないって言ってたから可愛そうな
んで作ってきてあげたのよ……勘違いしないでよ!幼馴染のよしみだからね!本当だからね!」
「あ、ああ」
瑞樹は弁当を渡すと顔を赤くしながら、走って自分の教室に行ってしまった。
教室に戻り、席について包みを開く、いかにも女の子が使うような可愛らしい熊の絵の描か
れたプラスチックの弁当箱が出てきた。
蓋を開けると綺麗に盛り付けられたおかずとご飯があり、ご飯の上には桜デンプンが乗って
いた。 ちなみに桜デンプンは俺の好物でよく母さんに幼稚園の弁当につけてくれとねだった
ものだ。
「あっ……美味い」
一口食べて思わずそう口走ってしまい、周りに聞かれていないか少しあせったが、幸い誰も
聞いていないようなのでそのまま黙って食べ続けた。
これってやっぱり瑞樹が作ったのかな?
そう思うと俺も少し顔が赤くなってしまい周りの人間に気づかれないように食べるのが大変
だった……。