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鬼姫に彼氏を

10

「やあ、おはよう諸君!」

 昨日の勝負によって勝利した周防先輩が放課後、生徒会室に付き合い同盟賛同者達を集めて
勝利宣言を始めていた。

「……つまり我々が勝利したのはひとえに君たち同盟員達の情熱と努力によってが理由だ。だ
からこそ我々はこの最初のチャンスを生かし……」

俺の存在に気づき先輩が近づいてくる。

「やあやあ和樹君!君も我々の勝利にお祝いを言いにきてくれたのかな?」

「いや、先輩が昨日生徒会室に来てくれといったからきたんですが?」

「ああ、そうだったね……覚えているよ」

「絶対いま忘れてましたよね?」

「そんなことはどうだっていいじゃないか、それより君に合わせたい奴がいるんだ」

 そういって合図をして誰かを促すと、同盟員の中から一人の男子生徒がゆっくりと出てきた。

 先輩とは時代の違う現代風の爽やかな顔に高身長、穏やかそうな雰囲気を持っていて中々に
というか男の俺から見てもすごく魅力的な男性だった。

「紹介しよう……小林洋二君だ…彼を瑞樹君に挑戦させてみようと思う」
「よろしく……小林です」

 見たことの無い顔だな……っていうか制服が違う……つまり……他校の生徒?

「先輩……その……この人は……」

「そう……うちの学校ではない!仕方のないことなんだよ、我が校の同盟員はみな一度は瑞樹
君に振られているからね……そうするとどうしても他校の生徒を使うしかないのだよ」

「はあ……そうなんですか」 

「ちょっと待ったあぁぁ!」

 後ろから誰かが大声を出す。『なにやつ!…』時代劇の悪役のような声を上げて周防先輩が
声のした方を見る。 そして俺も見る。

 振り返ると誰も居ない。 確かに聞こえたのに……、その時天井からガタガタ音がする。

 周防先輩も俺もそして他の人たちも天井を見上げていると、天井の板が一枚外れ、そこから
剥離先輩が逆さまに顔を出す。

「他校の生徒を使うとは卑怯だぞ…周防よ恥を知れ!」

「恥を知れ!」

 さりげなく天井の他の板を外して、その他の隊員達も剥離先輩と一緒に声を上げる。 頭を
逆さにした状態で……。 まるでモグラ叩きのモグラみたいだ。 

 周防先輩を見ると余裕の顔で彼らを見ている。

「もう一度言うぞ……周防よ……お前には誇りがないのか?瑞樹嬢にアタックするために他校
の生徒を使うなど誇りのないものがすることぞ……恥を知れ!」

 周防先輩の側でも『おお』とか『確かに』という声が聞こえる。しかし周防先輩は余裕の顔
で答える

「何を言っている……同盟員になるのに他校の生徒は入れないという決まりは無いし、それに
彼女が幸せに青春を感じることができるなら問題はないじゃないか……それにうちの生徒なら
学校内で色々妨害ができるからそんなことを言っているんだろう!」

「ぬぁっ……!しまった!」

 どうやら図星だったらしく、そのショックでバランスを崩し、頭から床に落ちた。


「隊長!」

 他の隊員達も慌てて天井から降りてきて剥離先輩を介抱する。

「ぐっ……何のこれしき、周防よ、貴様は……貴様は……」

 ぐるんぐるん回る目で睨みつける剥離先輩を見下すように、

「まあ……君たちはせいぜい彼女の銅像でも作って後生大事に拝んでてくれよ……もっとも君
たちならフィギアの方がいいかもね?あっ、後で天井の修理代送っておくから払っておくよう
に」

 剥離先輩は隊員に肩を担がれながら屈辱に震えた顔で黙って部屋を出ていった。

「余計なことで時間を無駄にしたけど……それじゃ斉藤君から彼にアドバイスを授けてくれた
まえ」 

 ちらりと小林君を見る。 およそ俺から見てもルックスに関しては問題無いと思う……、前
に瑞樹がいいと言ってた芸能人に似てる……ような気もするし、これはイケるんじゃないだろ
うか……。

「それじゃ早速帰りがてら色々話しようか?」

 俺は彼を促して教室をでていく

 周防先輩達はこれからの戦略を練るためにまだ学校に残るそうだ。 何で瑞希の為にそこま
で真剣に考えられるかわからないが、おそらく聞いたら愛とかそれが青春だとか答えるのだろ
う……全く理解できないけれど。

「しかし他の学校でも瑞樹って知られてたなんて意外だな」

「そう?俺の学校でも有名だよ?可憐だって」

「……可憐か」

 およそ瑞樹とは一光年離れてる言葉だな。

「君は彼女のことそう思わないのかい?」

「思う……?まさか!確かに顔は可愛いけどあいつは鬼だよ」

「誰が鬼ですって……?」

 びくっと後ろから聞き覚えのある声がする。

振り向くと先ほど話していた鬼……いや瑞樹が立っていた。

「よ、よお……なんでこんな時間にの、残ってるんだ?な、なにか用でも?」

 いかん声が震える。 早くごまかさなくては……。

「今日は日直だったんでね……帰ろうと思ったらあんたの下駄箱に靴があったから一緒に帰っ
てあげようと思って探してたのよ」

「そ、そうか……で、でも今日はか、彼と一緒に帰るから……い、いいよ」

 小林君の方を見る。 彼はニコニコとした顔で瑞樹を見ている。

 瑞樹は瑞樹で小林君をじろっと睨みつけて、

「……何で他の学校の生徒がいるのよ?」

「いや……今日たまたま会って意気投合したんだよ……な?小林君?そうだ!帰りの方向も一
緒だから3人で帰ろうじゃないか!」

 実際に小林君の家など知らないのだけど誤魔化すため俺はそう提案したが、

「嫌!」

 却下された。

「なんで知らない奴と一緒に帰らなければいけないのよ?二人でいればいいじゃない。私は今
日帰りに47号屋いってチョコオレンジ食べるから」

「あいかわらず微妙な組み合わせが好きだな……」

「とにかくあんた達二人は男同士仲良く帰ってなさいよ!それじゃあね」
「あっ!待って!47号屋行くならちょうど無料券持ってるよ、ちょうど三枚あるから三人分
使えるから良かったら一緒に行こうよ」

「……………」

 ものすごく渋い顔をして瑞樹がこちらをじっと見ている。

「そ、そうだよ!一緒に行こうぜ47号屋……俺も行きたいし」

「……わかったわよ」

 嫌々だが瑞樹も了解した。 何で自分で行くって言ってたのに嫌そうな顔をしているのが少
し気になるが………………。


red18
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