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鬼姫に彼氏を

26

 昼休み……食欲が無い。 今日は無理して学校に来た。 和樹がいたらどうしようと思った
けれど、どうやら今日はいないようだ。

 会いたくないはずなのになんで私は和樹の教室に居るか居ないか確かめにきてしまったんだ
ろう……?

 矛盾……。 そんな言葉が頭に浮かぶ。
 和樹に会いたくないはずなのに教室にまで来てしまった自分の理解できない行動はその言葉
の示す通りなのだろう。

 何故?……そんなことはわかりきっていることなのだろうが……それでも不思議だった。 
きっかけは小林君のあの指摘だった。

『本当に好きな人には迷惑がられている……』確かに私は幼馴染ということで甘えていたかも
しれない。 でも迷惑をかけているつもりはなかった。

 ただ……ただ……、なんだろう? ただ私は和樹に何をしたかったのだろう?

 いや……そんなことはわかっている。

 私は寂しかったのだ。 成長すればするほどあいつは私によそよそしくなった。
 別に無視するとかそういうことではなくて、男女が歳相応に異性を意識するようなそんな感
じのよそよそしさ……ある意味誰もが通る道ということは私も解っている。

 けれどそれが私には許せなかった。

 何故あいつはそんなことをするのか? 幼馴染……、それこそ生まれてからずっと一緒といっ
ても過言ではないくらいの付き合いなのに……。

 だから私は彼にちょっかいをかけ続けた。 

 朝、蹴り起こして憎まれ口を叩いたり、私に彼氏ができたらどんな反応をするだろうと思っ
てとりあえず告白してきた男の子と付き合って紹介してみたりもした。

 そんな関係がイラつくこともあるが楽しくもあったので私はいつの間にか目的を忘れていた
のだ。

 このままでいい……いっそこのままで……と私は思い始めていた。

 それが小林君の言葉で私の大きな勘違いだということに気づいてしまった。

 そんなことを続けていても結局は二人の関係は風化していく、まるで砂漠の真ん中に置かれ
た石像が風と砂粒で徐々に削られてやがては消えて無くなるように……。 確かにあったはず
なのに綺麗に何も残さずに……。 大人になったら、あの頃は若かったわねと寂しそうに笑う
のだろうか? 


  けれどそれが私には許せなかった。


 何故あいつはそんなことをするのか? 幼馴染……、それこそ生まれてからずっと一緒といっ
ても過言ではないくらいの付き合いなのに……。

 だから私は彼にちょっかいをかけ続けた。 

 朝、蹴り起こして憎まれ口を叩いたり、私に彼氏ができたらどんな反応をするだろうと思っ
てとりあえず告白してきた男の子と付き合って紹介してみたりもした。

 そんな関係がイラつくこともあるが楽しくもあったので私はいつの間にか目的を忘れていた
のだ。

 このままでいい……いっそこのままで……と私は思い始めていた。

 それが小林君の言葉で私の大きな勘違いだということに気づいてしまった。

 そんなことを続けていても結局は二人の関係は風化していく、まるで砂漠の真ん中に置かれ
た石像が風と砂粒で徐々に削られてやがては消えて無くなるように……。 確かにあったはず
なのに綺麗に何も残さずに……。 大人になったら、あの頃は若かったわねと寂しそうに笑う
のだろうか? 

 でもそんなことは私は望んでいない。

 どうせ消えてしまうなら徐々に削られていつの間にか無くなってしまうようなことなら私は
いっそのこと自分の気持ちをぶつけて砕け散りたい!

 どうせこの関係が終わってしまうならそうした方がいいと思う。

 だから……今日、学校が終わったらあいつの家に行こう……。

 あいつの家に行って……いつものように階段をドタドタと上がって寝ているあいつの横っ腹
に蹴りを入れて無理やり起こして告白するんだ! いつものような感じで……。 
そして私はあいつに……言葉を…告白を……しよう。

 ぶるっと身体が震える、砕け散ろうと思っていたのにそのことを考えると身体が震えて
しまう。

 結果はわかりきっているのにそれでも私はそれが確定してしまうことを恐れているのだ。

「結局昔のままの弱虫なのかな……」

 ポツリとつぶやくが、周囲には聞こえなかったようだ。 当然だ……。 私の周りには誰も
いないのだから。

 入学当初はそれなりに話かけてくるものもいたけれど私が男子に人気があるのがクラスの女
子達は気に入らないらしく緩やかに私は無視されていった。

 必要な時以外はしゃべらない。 よって昼休みに入って自分の弁当を出している私の周りに
は誰もいない。 みな好きな友達と机をくっつけて話し込んでいる。 男子も最初は俺達と一
緒に食べようなんて声をかけてきたけれど、クラスの女子の反感を買うのを恐れてすぐに声を
かけられなくなった。

 私は怖い。 今まではクラスで無視されていても和樹がいたので別に気にならなかった。

 でも和樹と私の関係が切れてしまったら私には話す相手がいなくなってしまう。 本当に一
人になってしまう。

 それも私には……怖いのだ。

 一体どうしたらいいのだろう? そう思っていても何も決められずに私は一人、自分の弁当
をつついている。

「ガガッ……えーテステス」

 急に校内放送のスイッチが入り、誰かの声がスピーカーから流れてくる。 しかし今の私に
はどうでもいいことだ、それより今日どうしようか……。

「えー、副生徒会長のニ年C組周防純です。相馬瑞樹さん、相馬瑞樹さん……あなたに大事な
発表があります」

 クラスの生徒達が一斉に私を見る。

 女子は今度は生徒会に色目を使ったのかしらと言うような目で見て、男子はおとなしくこち
らをチラリと見ているがその目には好奇心がありありと浮かんでいて、まるで自分が珍しい動
物のように思われているようで不愉快だった。

「本日……私達相馬瑞樹と付き合いたい同盟は、たった今から相馬瑞樹防衛隊に宣戦布告を宣
言します」

 クラスの女子、男子、そして私自身もポカーンとしてしまっている。 当然だ。 付き合い
たい同盟? 防衛隊? なんなのそれ?  

 しかしスピーカーで演説している周防という先輩はまるでこちら側の人間は皆知ってるかの
ように宣戦布告の理由をすらすらと語り始める

「そもそも我々は相馬瑞樹さんと付き合いたい仲間が集まって結成した同盟であり、行動の目
的は瑞樹さんと付き合う代表を決めてそのサポートフォローをすることです。そして我々は代
表を決め、瑞樹さんの幼馴染である斉藤和樹君の協力を得て瑞樹さん攻略を進めていたのです
が!………ここで邪魔が入った!つまり防衛隊の妨害です。彼らは瑞樹さんを勝手に神格化し
彼女の純潔を守るという実に無知蒙昧なことを言っている負け犬達です。その負け犬たちが我々
の妨害をやめずに挙句の果てには我々の仲間たちをも餌食にするという暴挙を犯したのであ
ります。未来のある若人達を毒牙にかけるようなことをする防衛隊に我々は怒りを禁じ得ませ
ん。よって今ここに宣戦布告を宣言するものとします!相馬瑞樹さん……あなたはどうか我々
同盟が防衛隊を完膚なきまでに叩き潰すところを見ていただきたく、ここに放送で宣言しまし
た。決戦の時刻は十二時半……つまり今です!どうか体育館にいらしてください。そこで同盟
は敵を打ち破ります」

 放送が終わった。


 周りのクラスから何人もの足音が体育館に向かったのがわかった。 私のクラスは誰も動か
ない。 ただみんな私をじっと見つめている。 どうやらみんな私が体育館に行くのかどうか
……それを確かめたいようだ。

 私はイスから立ちあがり、まっすぐ教室の戸に向かう。

 そして教室の戸を乱暴に開けて体育館に向かって走り出した……………。














red18
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